解約権のない賃貸借契約

ア 事例

Aは、代表取締役としてX社を経営していました。X社は、会社から離れた場所に土地(以下「本件土地」と言います)を所有していました。その土地に隣接した建物にY社の本社がありましたが、その代表取締役Bは、Aのいとこでした。Y社は、その業務のため、車の駐車場を必要としたため、本件土地を駐車場として、X社より、月30万円の賃料で、20●●年●月まで、15年間、賃借することになりました(以下「本件契約」と言います。)。  契約書は作成しましたが、代表取締役同士が親戚であったことから、簡単な契約書で、契約期間、賃料は、規定しましたが、契約の解除権については、X社の側からもY社の側からも規定しませんでした(解除権については、契約書面に全く記載がないということです)。  この賃貸借契約が締結された後、5年ほどたって、AB双方が亡くなり、その息子であるA2、B2がそれぞれの会社の代表取締役となりました。  しかし、この代替わりにより、Y社は、本社を移転することになり、今まで、使用していた本件土地の駐車場は不要となりました。そこで、Y社は、X社に対し、本件賃貸借契約の解約を申し入れましたが、X社はこれを拒否しました。

Y社は、使用しない土地に賃料を支払う必要はないと、賃料の支払いをとめたところ、X社より、賃料請求訴訟を起こされた。

イ 解説

(ア) 契約自由の原則     「契約については当事者が自由にその内容を定めることができる。」「また、契約をするかどうか、誰と契約をするかも自由に決められる。これらの、契約内容に関する自由、締結の自由、相手方選択の自由に、契約方針の自由(書面要件等の廃止)をあわせて、契約自由の原則と呼ぶ。」とされています(内田隆著「民法Ⅱ 債権各論」19頁)。     日本の民法は、第91条で 「法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。」     と定め、この契約自由の原則を前提としています。

(イ) 強行規定と任意規定 上記の民法91条は、「法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。」と定めています。 公の秩序に関しない規定を「任意規定(にんいきてい)」、公の秩序に関する規定を「強行規定(きょうこうきてい)」といいます。民法91条は、任意規定と異なった内容の契約(契約は法律行為の一種です)でも有効であることを規定しています。この逆に、強行規定については、これと異なる内容の契約を締結しても、その効力が発生しないと定めているのです。 強行規定が含まれる法律として、わかりやすいものとしては、労働基準法、利息制限法等の法律があります。どちらも、労働者、(お金の)借り主が、使用者(雇用主)、(お金の)貸し主よりも、弱者であるとの前提のもと、いくつかの事項については、たとえ、使用者(雇用主)と労働者、お金の借り主が貸し主と契約をしたとしても、法律と異なる事項は効力を生じない(無効)という規定を置いています。  労働基準法は、労働時間・休憩時間・休日を定めています。そして、同法13条は、 「第13条  この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。 」 と定めています。労働基準法が定める労働時間・休憩時間・休日は、強行規定ということになります。なお、任意規定と強行規定の区別については常に、このように法律で明記されているわけではなく、解釈で判断される場合もあります。後記の利息制限法はこの例です。  したがって、会社が就業規則で、1日8時間を超えて9時間・10時間の所定労働時間を定めたとしても労働基準法違反ですので、8時間に修正され、それを越えて働いた時間については、残業代が発生することになります。

また、利息制限法1条は、 「金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。 1 元本の額が10万円未満の場合 年2割 2 元本の額が10万円以上100万円未満の場合 年1割8分 3 元本の額が100万円以上の場合 年1割5分」 と定めています。  したがって、100万円を年2割の利息で貸すという契約を締結したとしても、5分の利息分の契約は無効となります。

(イ) 本件事例の解説     借地借家法の適用があるのは、①「建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃貸権」②「建物の賃貸借」です。本件は、駐車場の賃貸借契約の問題ですので、借地借家法の適用はありません。     民法617条は、その第1項で、 「 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。 1  土地の賃貸借 一年 2  建物の賃貸借 三箇月 3  動産及び貸席の賃貸借 一日 」 と定めていますが、本件は、15年という賃貸借期間が定められていますから、期間の定めの内場合に適用されるこの規定の適用もありません。   したがって、本件契約については、当事者が作成した書面どおりの効果が認められることになりますので、Yから本件契約を解除することはできないことになります。なお、この場合であっても、Xに本件契約の約束違反(債務不履行)があれば、催告の上、Yから本件契約を解除することもできますが、本事例の場合は、Xに債務不履行はありませんから、債務不履行を理由にYから解除することもできません。   法的な理論の中には、契約の目的が終了すれば契約も終了するという理屈もありますが、実務的には、この理屈は認められず、結局、Yは、賃貸借の期間の間、賃料を払い続ける義務があることになります。

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