専属的合意管轄

ア 事例

X株式会社は、東京にある精密機械の工場です。Yは、●●県の工作機械の製造・販売メーカーです。XがYから工作機械を購入しました。購入の際の契約書には、「甲(Yのこと)乙(Xのこと)間の紛争に関しては、●●地方裁判所を第一審の専属管轄裁判所とする」旨、規定されていました。
Xは、Yから購入した工作機械に瑕疵があったとして、Yに対し、契約を解除の上、損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に提起しました。ところが、Yから、前記契約書に基づき●●地方裁判所への移送の申立が行われ、裁判所が移送の決定を行ったことから、●●地方裁判所で、裁判を行わなければならないことになってしまいました。

イ 解説

(ア) 裁判所の管轄について
管轄とは、その事件についてどの裁判所で裁判を行うことができるか、あるいは、裁判を行わなければならないかということと考えていただければ、わかりやすいかと思います。
どこの裁判所で裁判を行うかということについては、特に、当事者双方の所在地が離れている場合、たとえば、九州、沖縄と北海道、東京と北海道、東京と九州、沖縄というような場合、当事者の利害に大きな影響を与えます。遠距離の裁判所に行かなければならない場合、代表者本人が行く場合であっても、交通費がかかりますし、宿泊しなければ為らない場合は、その費用がかかります。
弁護士に頼むとしても、自分の所在地の近くの弁護士に頼むとしても、打ち合わせ等には便利ですが、弁護士が裁判所に行く旅費、日当はかかります。裁判の弁論期日でも電話で行う電話会議も可能であり、弁護士が直接遠方の裁判所に行く回数はかなり減りましたが、最低限、尋問、和解の場合はやはり、弁護士及び本人が行くことになります。
また、裁判所の近くの弁護士を依頼した場合、弁護士自身の交通費、日当はかからなくなるにせよ、打ち合わせの度に、当方の会社の担当者等が、弁護士の事務所等に行かなくてはならなくなります。

(イ) 合意管轄
日本の民事訴訟法は、管轄について、いろいろな定めを行っていますが、法律に従えば、多くの場合は、訴えを提起した原告の所在地の裁判所で裁判を行うことができます。  しかし、他方、民事訴訟法は、  「第11条 1 当事者は、第一審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができる。 2 前項の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない。 3 第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。」 と当事者の合意により管轄を定めることも認めています。  当事者の合意で定められた管轄には、法律で定められた管轄のない裁判所を管轄裁判所と認める付加的合意と、特定の裁判所だけを管轄裁判所としその他の裁判所の管轄を排除しようとする専属的合意とがあります。  前記の事例の場合は、契約の文言上、専属的合意管轄と考えられます。  裁判所は、提起された裁判が、その管轄に属しないと認めるときには、申立によりまたは職権で、管轄のある裁判所に移送します(民訴法16条)。したがって、この合意が有効だとすると事例のように、Xは●●地方裁判所で、裁判をしなくてはならなくなります。  このような専属的合意管轄がある場合でも、Xが消費者でYが業者のような場合は、裁判所は、民訴法17条の類推適用により、公平の観点から移送を却下することがありますが、本件のように、両者が対等と考えられる場合は、困難です。

(ウ) 結論  契約する場合、裁判になることを考えるのは、難しいかと思いますが、現実に訴訟となった場合、管轄は重要な意味を持つ場合があります。前記の例は、国内のことですが、当然、外国との契約においても問題となり、その場合の方が重要な意味を持ちます。

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