ア 証拠としての契約書・合意書等

契約書は、書証(紙の証拠)になりますので、そこに記載された内容は、後々の紛争を防止する効果があります。これが、契約書を作成する大きな目的の一つです。

契約書がないと言った・言わない等のトラブルになることがあります。特に、ソフトウェアの開発やサービスの提供等、無形なものを対象とする契約については、どこまでの内容が本来の契約に含まれるかで代金額すら争いになることがありますし、提供されるソフトウェアやサービスという商品の品質についてはなおさらです。

契約書がない場合、当事者間に悪気等なくても、担当者が会社を辞めたり、亡くなったりした場合は、契約の具体的内容がわからなくなり、前記と同様のトラブルが生じることになります。

紛争を解決するための合意書の場合は、合意書がなければ、さらに再紛争の可能性が大きくなります。

契約書等がない状態で、紛争が生じ、裁判となると、例え請求書等があっても一方当事者が作成したものですので、最終的には、契約当事者双方から証人・本人が法廷に出て、尋問を行い、裁判官が判決を出すことになります。しかし、それには、年単位の時間がかかりますし、当事者の労力も大変なものになります。

適正な内容の契約書があれば、裁判においても、有効な書証(紙の証拠)となり簡単に決着がつくことになります。

ただ、裁判においても有効な書証になるためには、裁判官からみて、誤解のないように記載されていなければなりません。

業界の用語や技術的な用語で、意味が裁判官からわからない用語を用いてしまうと、せっかく契約書を作成する意味が失われる危険もあります。

その業界外の第三者にもわかるように、できれば、法律用語を使用し、意味を特定して作成する必要があります。

イ 契約書・合意書による合意内容の明確化

契約書を作成することにより、双方の合意の内容が明確化します。

契約当事者双方は、各々の負担する義務(債務)の内容等を、再度、確認することができます。

これにより、相互の認識のズレがある点については双方の認識を一致させ、また、見落とし等があれば、これを修正することができます。

さらに、契約書の作成を行う過程で、当事者相互にどのように債務を履行すればよいかを検討することにより、契約の履行をスムーズにすることができることになります。

このようにして作成された契約書の締結により、特に会社としての契約当事者双方に、契約が締結されたという認識を確定することもできます。

契約書の作成は、このような機能も有しているのです。

ウ 合意により法律と異なる効果を生じさせる必要がある場合

日本の民法は、贈与・売買・交換・消費貸借・使用貸借・賃貸借・雇用・請負・委任・寄託・組合・終身定期金・和解の13の契約を典型契約として、定めています。

典型契約を定めた民法の規定の殆どは、「任意規定(にんいきてい)」です。

任意規定とは、当事者が法令の規定と異なる意思を表示した場合、その効力が優先して法令の規定が排除される規定です。

なお、任意規定と異なる規定として、強行規定(きょうこうきてい)があります。

強行規定(きょうこうきてい)は、公の秩序に関する規定であり、当事者がこの規定と異なる意思を表示したとしても、その意思は効力を有せず、法律に定められたとおりの効力が発生することになります。

民法における強行規定の例としては、民法第5条の定める未成年者の法律行為の規定があります。

民法第5条は、
「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3  第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。」
と定めています。

例えば、甲が乙に、自動車を売却するに際し、契約書に「当事者が未成年であっても、本契約は取り消せない。」と規定しても、乙が未成年者の場合は、その規定は効力を生じず、乙の法定代理人等は、その契約を取り消すこともできます。

これに対し、任意規定の場合、例えば、民法558条は、売買契約に関する費用、すなわち、売買の目的物の測量・鑑定費用、証書に貼用する印紙代、公正証書作成の手数料等、契約締結に要する費用について「売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。」と定められていますが、当事者間が「売買契約に関する費用は乙(買主)が負担する」と契約書に記載すれば、費用は買主が負担することになります。

任意規定の場合でも、契約書にその事項について記載がされなければ、法律の規定の効果が生じることになりますので、法律の規定と異なる効果を生じさせようとする場合は、そのことを、契約書に記載しなければなりません。

エ 契約の効果を発生するために契約書等の書面が必要な場合

契約の効果を生じさせるためには、書面を作成する必要がある場合があります。

例えば、保証契約は、「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」(民法446条2項)と定められています。

なお、保証契約について、書面が必要とされたのは、平成17年4月1日施行の民法改正からでありこれ以前の保証契約については、口頭でも効力が生じます(ただし、保証人が保証契約の存在を否定した場合は、その存在を立証することは、困難ですが。)。

また、定期借地権設定契約(借地借家法22条)、定期賃貸借契約(借地借家法38条1項)については、単なる書面では足りず、「公正証書による等書面によって契約」することが効力発生の要件とされています。
 
法律上の必要性がある場合以外でも、土地・建物についての所有権移転登記等の不動産登記申請を行うため等の場合には、添付資料として契約書等が必要になることがあります。

また、税務上、会社の稟議上、契約書が必要になることは、通常のことです。

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